DAYS_

Koichi Futatsumata

箱根のリゾートマンション

1
箱根に半世紀以上前に建てられた日本初のリゾートマンションの一室をリノベーションする計画が進行中。先週、3度目の現調に行ったのだが、行くにつれいろいろ当時のことが見えてくる。これを設計したのは、建築家の吉村順三氏。だからいろんな意味で気を遣う仕事ではあるのだけれども、しかし良いものを本当の意味で永きに残すというのはどういうことか、そういうプロジェクトだと思う。

3
生活スタイルはこの半世紀で大きく変わって、建築や内装、設備の老朽化もかなり進んでいる。当時のものをオリジナルのままそのまま引き継ぐべきことと、今ここで考え直すべきことがあって、それらをどう同居させるか。既存を受け入れ更に昇華させる。つまり、過去を未来に繋ぐ、に近い。と言っても、どれだけ時代のスピード感が増そうが半世紀前と今と人の根源的な心はそれほど変わってはいないから、その心地よさや感動やそういうものは意外と共有しているものだ。

2
もちろん完全保存すべきという考え方もあるだろう。しかし、敢えて新たな考えも持つべきだと僕は思っている。現役のまま機能し残るものの全ては、保存でなく進化が問われるものだ。例え歴史的な工芸みたいなものであっても、飾り物ではなく残り慕われ続けるものには進化しかあり得ない。(繰り返すが、現役の場合の話だ。財や資料となると別。)実際に今この建物が抱える問題は大きい。ここでリアルに生活している世帯数はわずか一桁で、全戸に所有者はいるがこの数十年全く使われていない部屋も多い。つまりこのままでは更なる老朽化の一途を辿るだろう。これからここに新たな人がちゃんと住むようになるにはどう在るべきか、どんな自由度や解釈を受け入れることが必要か。この箱根の立地をどのように考え活用してゆけるのか。そういうことも含め、今回のオーナーと共にこの計画に望んでいる。当時の楽しくも感心させられるいろんなディテールと向き合いながら、新旧のさじ加減やらを考えている。

SHARE :