Persistence is better

変わらず続けていくこと

Photographs by Koji Michizoe(DazzleWorks), Words&Edit by Masafumi Tada(REDACTION)

3年前の3月、第1回目のthoughtが長崎県・波佐見町で開催された。その会場にプレスとして足を運んでいた私に実行委員の林さんが「来月はCENTRAL_だね! ここに来ていて大丈夫なの(笑)?」とサイト公開の進捗を気遣って、声をかけてくれたのを今でも覚えている。それから、これまでに4回のthoughtが開催され、実行委員の藤戸さんがCENTRAL_の起ち上げメンバーということもあって、他のプレスよりも近いところからthoughtを見てきたのではないかと思う。

ことし5度目の開催を迎えた合同展示会thought。主に九州で活動するアパレルや雑貨のブランドが集まり、プレスやバイヤーに向けた「展示会」と、誰もが入場でき買物を楽しめる「マーケット」を行うという構成は変わっていないが、開催場所が長崎県・波佐見町から福岡県の太宰府天満宮へと変わった。これまでも開催場所に対しての想いや強いこだわりを実行委員が持っていることは知っていたが、太宰府天満宮で開催すると聞いた時は驚きと、また新たなことが起こるのではという高揚感の2つが入り混じった気持ちとなり、開催を心待ちにしていた。

今回のFEATUREは、梅の花が咲き誇る3月16日〜18日に太宰府天満宮内の文書館と旧東屋で開催されたthoughtの会場で、実行委員を務める藤戸 剛さん、林 博之さん、植村 浩二さん、南 久仁さん、田浦 尚子さんに同じ質問を個別に投げかけ、会場の雰囲気を見ながら話をしてもらった内容となっている。ふだんの語り口調で飾らずに話をしてくれた、そのままをお届けしたい。




CENTRAL_(以下 C) :過去のインタビューでも「どこで開催するか」という話が出ていましたが、福岡での初開催や、太宰府天満宮という場所について聞かせてください

林さん(以下 林):人のつながりがあったらからこそ、太宰府天満宮で開催することができました。僕と多田くん(CENTRAL_編集部)との出会いもそうだけど、そのころからCENTRAL_とのつながり、CENTRAL_をサポートしてくれている鈴懸の中岡社長、そこからつながった太宰府天満宮の権宮司とのつながり。その人のつながりがなかったら開催できてなかったからね。これまでの長崎県・波佐見での開催もそうで波佐見の人たちとのつながりからで、最初は町の文化財である講堂を貸してもらえなかったけど、西海陶器さんが西の原を貸してくれるとなって1回目が開催できて、その後3回実績を作ることをできたから、4回目では町長が文化財の講堂を貸してくれることになった。全部、人でつながってきているから、探していたわけではなかったけど、人が導いてくれたという感じですね。


hayashi 林 博之さん



藤戸さん(以下 藤):ここでやるために、続けよったかいなというのは正直あるね。アクセスは、バイヤーさんからすると格段によかたいね。福岡空港からはバス、天神から電車もあって、早ければ30分ほどで着くけんね。
これまで、自分たちが言ってきた“土地に力”があるところとか、そういうテーマで場所を探して、最初に辿り着いたのは縁があって波佐見やったちゃんね。波佐見の町は、すごい良かったし、波佐見で開催してきたthoughtは、あの場所でしかできない形になってたしね。今回、CENTRAL_のサポートなどもしてくれている鈴懸の中岡さんが紹介してくれたというのもあって、ふつうは貸してもらえないような場所を太宰府天満宮さんに貸してもらえ、感謝しかないですよね。そもそも、歴史を辿ると奈良、平安時代かな、九州の経済や文化の交流の場として、外国との窓口となった役所(大宰府)として治めとった政庁の跡地やけんね。その場所でthoughtを開催できるということは、これ以上の場所はないんじゃないかなという気もするし、スーッと着地した感じはするね。


植村さん(以下 植):生まれ育った街・福岡で開催できるというのはテンションというか気持ちの面が違いますね。福岡開催は、これまでも言われてきましたし、実行委員の中でも福岡開催というのは頭の中にずっとあったので。九州の良さは、場所や人、空気感などにあると思っていて、前回の波佐見で使わせてもらった文化財である講堂がそういうところだったから、福岡で開催するとなると場所が限られてくるので、太宰府しか選択肢がなかったのかもしれないですね。


南さん(以下 南):特に福岡開催だからといった特別なことは考えていないですね。“九州”でというところでthoughtを開催しているので。ふだん、僕らは福岡で活動しているというところで福岡開催も一つだし、これまでの長崎もそうですし、場所があれば、佐賀、大分、鹿児島、宮崎という感じですよね。福岡で、ようやく開催できたというのはあるんですけど、絶対福岡ではないといけないというのはないですね。いい場所があれば、というのは変わらない想いですし。ただ、アクセスは良くなるので優位性はあると思いますよ。一般に向けての反応は、3日目のマーケットで見てみたいですね。これまでもマーケットでは1日に1000人くらいが来場しているので。今後のステップアップに向けて、福岡・太宰府天満宮での開催は一つのきっかけになるんじゃないかなと思っています。

田浦さん(以下田):今回から正式に実行委員として参加したのですが、裏方の手伝いとしては2回目の開催からさせてもらっていました。これまでは出展者としても参加していましたので出展者よりで手伝っていましたが、正式に実行委員として参加すると、気の遣い方など立場が逆転したような感じで、これまで実行委員の皆さんは大変だったんだなぁと思いました。
今まで、周りの方から「福岡で開催されたら行きやすいのに」とずっと言われてきたので、“次は太宰府で開催するよ”と話した時の反応も良かったですね。それから、こういう場所を使えるということにも驚きました。当然、一人では借りられない場所を、これまで実行委員の4人が築いてきた実績があって借りられることにつながっているんだなと。

taura 田浦 尚子さん




C:今回、場所は変わりましたが、その他に変わったこと、変わっていないことはありますか?

:場所は変わったけど、thoughtの軸は変わらんよ。九州で物づくりしよう人を中心に集めるというところで、今までどおりやりようけんね。変わったことというか、俺が一番したかったことやけど、今回は九州のブランドの出展が8割くらいになったから、九州の匂いみたいなのが強くなっとうというのはあるね。


:人の出会いが起こりえる場所にしたいから、そのためには継続していかないといけないし、実行委員5人が継続するには構造をシンプルにしないといけないので、余計な装飾はしない、その代わりにいい空間に見えるようにしたいので、場所にはこだわりたいというのは変わっていないですね。


:変わった点ですと、新規で出展される方も増えてきています。バランスは実行委員で考えているんですけど、新規の方にも入ってもらって化学反応を起こしてもらいたいですね。九州の若手から大人の方までと年齢層を問わない人たちで、衣食住のプロダクトを提案していきたいというところは変わってません。

uemura 植村 浩二さん


C 年々、thoughtの認知度は全国的にも高まってきているかと思いますが、
各出展ブランドの認知度なども合わせ、その点はどのように思われていますか?

:今回、認知度は跳ね上がってる感があるね。口にしてくれている人が多いというか。「thought」で検索すると、「thought 太宰府」って出てくるので、検索している人も多いんでしょうね。認知度も高まってきたのか出展をしたいという方も増えてきていますね。定員数より大幅に多くの出展希望があったので全体のバランスを実行委員で見ながら選定させてもらい20〜30の会社さんにはお断りさせてもらったんですよ。
軸は、九州発信というものを維持していきたいんで、あまり販路を持っていない方でもチャレンジできる場として、かつバイヤーさんがより集まってもらえるように、関東や関西、九州のメジャーなブランドさんにも出てもらうなど調整は実行委員でもしていきたいですね。


:thought自体の認知度が高まっているのは肌感として感じるよね。各出展社については、1回目から出続けてくれている全国区のブランドさんもあって、継続で出展してもらえているのもありがたいし、入門編として入ってきてもらえるブランドさんも嬉しいよね。起ち上げたばかりの方々には、thoughtの中で成長していってもらえるのもよかかなぁと。最初、植村のブランドの展示会ばせんばっちゃなかと、と言いよったのがthoughtの始まりみたいなもんやけん。ただ、九州で活動しよるからって誰でも出展できるわけじゃないけんさ。ブランドを起ち上げた人たちばかりが出られる場じゃなくて、すでに全国区で展開している人たちと一緒に出てもらうわけやけん、商材などを見せてもらいながら実行委員で選定させてもらいよる。合同展示会thoughtとしてのクオリティを上げていきたいしね。


:thoughtとしての認知度は高まっていますが、実際どのようなプロダクトがあるのか、まだまだ伝わっていないと思うので、九州にはこういうプロダクトがあるんですというアプローチをthoughtからもしていかないといけないとも思いますね。


:今回、16社くらいが新規で出展していて、thoughtに出たいという人が増えているのも感じます。thought自体の認知度は上がってきていると思いますが、出展社の個々は見えているようで、そこまで見えていない感じですかね。福岡や九州内の出展社同士は横のつながりでイベントをするといった、個々で認知度を上げる動きもあるので、そういうのはいいなと思います。

hisa 南 久仁さん


:thoughtとしては広く知られてきたのではと思います。出展側から見ると、「前回、見て気になっていたので」とリピートで来てくださる方もいらっしゃるので、何回も続けて出ることで認知度って蓄積されているんだなと思いました。最初は一回単位でしか “良かった”“ダメだった”と考えられなかったのですが、そういうことじゃなかったんだなぁと5回目を迎えて思いました。




ここで、3月8日に開催されたマーケットのようすを
マーケット06 マーケット04 文書館_マーケット05 00084.MTS.01_36_35_05.Still001 最終日に開催された、誰もが入場でき買物を楽しむことができるマーケットには2000人以上が来場したとのこと。この日は、旧東屋前で飲食の販売もあり、“九州の衣食住がそろう百貨店”に様変わりしたようだった。出展されている方からコメントをもらえたので、いくつかご紹介。

福岡県・糸島市に工房を構え、雑貨やテーブルウェアをはじめ、家具まで幅広く提案する、DOUBLE= DOUBLE FURNITUREの木工家・酒井さん「糸島の中だけで活動をしていた時は認知度に限りがありましたが、thoughtに出展するようになり多くの人と出会えるきっかけをもらえました。それは、バイヤーさんだけではなく、他の出展者の方ともですね。それから、展示会での見せ方というのも勉強になります。今回は、展示会用の什器も自ら制作しましたし、出展されている方から制作依頼も頂きました」

岩手県盛岡市に実店舗を構え、東北をメインとした各地の職人と共に様々なアイテムを開発し、本展ではテーブルウェア、子供椅子、生活雑貨、民芸品などを出展したHolzの平山さん「岩手県・盛岡から出展させてもらいまして、初めてのthoughtですし、初めての福岡です。マーケットのお客さんの反応は、民芸など見慣れていない商品のせいか、興味を持って頂いても様子を伺っている感じがしましたね。バイヤーさんは見慣れているというのもあってか商品が動いていましたので、商品の予備知識のようなものを広めていかないといけないなぁと気づいたこともあり、勉強になりました」

“ブルーシートをブルーシード(復興のたね)に”と、平成28年熊本地震で被災した家屋などで実際に使われたブルーシートを回収・洗浄し、トートバッグにしたBLUE SEED BAGを出展したBRIDGE KUMAMOTOの佐藤さん「会場だけでなく、お客さんの雰囲気もよく、持ってきていた25、6個のバッグが全て売れたので良かったです! 関東で2日間イベントした時よりも多く販売できたのは、同じ九州だったのかもしれないですし、価格設定があっていたのかもしれないですね」



C 最後に、これからのthoughtのあり方について聞かせてください。

:“続けていく”というのは、自分のブランド(FUJITO)のコンセプトにしとうとこもあるけん、そういうとこを皆に共感してもらえて、広がっていけば良かねとも思いよっちゃんね。あと、自分らは福岡で活動をしていたから、“九州”でくくって合同展示会をしようけど、今回、岩手県・盛岡から出展してくれているHOLTSの平山さんが中心になって、東北で『entwine』という合同展示会を始めたっちゃん。まだ、東北と関東のブランドの比率が半々って言いよったけど、これから各地方都市でこういうことが起こってもらいたいというのが、thoughtの目的でもあるっちゃん。そうなってきたら選択肢も広がるけんね。

go 藤戸 剛さん


:5回目を迎え、thoughtのクオリティが上がってきているように思えます。ここに出展したいという意志が強くあり、ここに出て何をするかというのを考えてもらえ、thoughtに向けたプロダクトを作るという意識になってきているなぁというのが、プロダクトから感じられます。実行委員をさせてもらっていますが、自分も1回目から自身のブランドを出展させてもらい、色々な面で成長させてもらっているので、これからは、自分のようにここで成長していくという人が新たに出てきてもらいたいですし、そういう場にしていきたいです。


:合同展示会という場が必要じゃなくなる人が増えていった方が成功しているということで、単独で展示会を開催し多くの人を集められれば、ここに出る必要はないわけですからね。逆にこういう場所が必要な人も出てくるだろうから、今後、僕らは出展しなくても実行委員として関わるかもしれないし、これからそれぞれがどういうあり方になるかは分かりませんが、thoughtを継続していきたいという思いは一つですね。





thought
衣食住のあらゆる分野において、主に九州内で活動するブランドやクリエイターが中心となっておこなう合同展示会。出展ブランドなどの確認はホームページからできます。http://www.thght.jp/

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