LIFEWORK

記録するように描いていく

Photographs by Ittoku Kawasaki,Words,Edit by Masafumi Tada

福岡を拠点に活動するアーティスト・佐々木亮平。 石や岩、庭木、水など日常的な自然物をモチーフにし緻密に描き上げる作品が特徴で、2018年に福岡で開催した個展以降も、翌年に東京や名古屋で個展を開催、ブランドへアートワークを提供するなど活躍の場を広げている。ことし2020年の夏、東京で同時多発的に、さまざまな形で作品が発表された。色使いの少ないシックで落ちついたもの、これまで見たことないようなポップなもの。作品の根底にあるものは同じように感じるが、見た感じの違いは歴然で、それぞれのテーマに沿ったと言えば、そうなのかもしれないが、根底に流れているものは何かが知りたくなった。今回は、佐々木亮平さんに、これらの作品が生まれた背景や、石や木などモノを描くようになったきっかけなどを聞かせてもらい、過去へ遡のぼるように根底につながるものを探ってみた。



20200914_0002 佐々木亮平さんのアトリエにて


CENTRAL_(以下 C):今夏、東京で作品を見てもらう機会が多かったと思いますが、振り返ってみて、どのように感じていますか?

佐々木亮平(以下S):昨年より同時ではないのですがいくつか依頼を頂いていまして、もともとは会期も離れていたのですが、コロナの影響により延期などで一時ストップしていたということもあって、次に動き出した時は同時じゃないですけど発表時期が近くなったんです。

本来は、少し離れたスケジュールで発表する予定だったので、制作のスタイルのようなものも分けて進めていたんですけど、会期が近くなったということで、同時期にさまざまスタイルのものを発表した形となり反応もさまざまでした。ただ、制作は外出自粛期間中ということもあったので、たっぷり時間をかけることはできました。


C:各展示について具体的に聞かせてもらえますか?

S:6月上旬から7月上旬にかけて、伊勢丹新宿店メンズ館にてMAISON EUREKAとの共同展示がありました(MAISON EUREKA × RYOHEI SASAKI 個展「BETTER THAN BEFORE BREAKING」)。きっかけは、昨年10月に行われたMAISON EUREKAの展示会で、コラボレーションアイテムを出させてもらっていて、その会場で伊勢丹の方に自分の別の作品を見てもらったことでした。

C:どういったものを発表したのですか?

S:この共同展示では、オリンピックをモチーフにしたTシャツ4型のアートワーク提供と、花器や陶器の置物などモノを描いた作品を16点ほど展示させてもらいました。展示作品の方は、MAISON EUREKAのデザイナー・中津 由利加さんと自分との共通点というか、モノに興味があったり、集めたりするというのがあったので、そこからきています。陶器などモノは壊れてしまいますが、日本には修復する『金継ぎ』という文化があって、以前よりそれを描いてみたかったので、修復したヒビの部分を黄色、赤、青で表現してみました。


20200914_0023 20200914_0023-3 展示した作品の数点で構成されたポスター 


C:次は、私がディレクションさせてもらった企画ですかね?

S:はい。7月下旬から8月下旬にかけて、渋谷にできた『MIYASHITA PARK』に出店した『HIGHTIDE STORE MIYASHITA PARK』内での企画で、本展用に描いた作品の展示と、オリジナルグッズ用にアートワークの提供などを行いました。


20200914_0041 20200914_0051 アメリカ西海岸をイメージし、坂に建つ家と庭木などを描いた作品。制作にあたっては福岡市内の坂を歩き回って着想を広げていったという


C:作品に関してはお任せていたのですが、家を描いた作品が出てきた時は驚きました。

S:家を描いたこともなかったですし、ちょっとダサい言い方なんですけど、“降りてきた”という感じで描きたくなったんです(笑)。ハイタイドさんに対してのイメージが、点だったといいますか。以前に個展会場へ来てくださったハイタイドの方から聞いた”ロサンゼルスにもお店がある”とか、“店内に小屋がある”といったキャッチーな言葉が頭の中にあって、それをつないでいって出てきたのが家だったんです。家には庭木があって、僕が描いているのも日本の家にある庭木ですし、アメリカの庭の木も同じように剪定するという文化があって、僕が育ったところも坂に建つ家だったので、その点がつながっていきました。


C:坂に建っているという表現についても聞かせてください。

S:本当のことを言うと、最初は坂を意識していなくて、なぜか家を斜めに描きたくなって最初の1軒を描いたんですよね。それを無造作に置いておいたものを見た時に、坂道に見えるということに気づき、それから描く家は全て同じ角度で斜めに描いていきました。最初から坂道に建つ家を描こうと思ったら、自分の性格上、土台を描いて、その上に真っ直ぐに建つ家を描いていたと思うんです。



20200914_0043 20200914_0057 オリジナルグッズ用に原画をグリッド化してピクトで描き直した作品
https://www.instagram.com/p/CDLVZFqjDlK/


C:これまでの佐々木さんの作品では見たことのないような斜めに建つ家という作風や、色使いで反応が気になっていましたが、幅広い方に評価されているようにも感じました。

S:今まで活動してきた中のものとは違った手応えがありました。最初からポップな感じにしようとかは思っていないんですけど、僕自身は描きたいなと思う絵に対しては全て同じように取り組んでいまして、すごい考えこんで描いたということでもなく、パンッ!と出てきたものを直感的に描いていく感じなので、でき上がってから考えてしまいますね。これまでの感じとは違うので、大丈夫かな(笑)みたいな。ただ、今までも作風が変わってきた経歴があるので、“変わったね”と言われることに対しては免疫はあります。色使いについては、どこかでハイタイドさんというイメージが影響しているとは思うんですよ。豊富なカラーリングの商材を扱っていることや、商品が幅広い層に支持されていることなど。


C:ほぼ同じタイミングでNIKEのTシャツ企画からのリリースもありましたね。

S:はい、表参道にあった『NIKE KICKS LOUNGE OMOTESANDO』にて、この企画用に描いた作品をTシャツなどに転写プリントできるという企画で、合わせて作品の展示もありました。自分の中でNIKEのイメージとして“AIR”というのがあったので、対極にある大きな岩を描きたいと思ったんです。最初は浮かんだような岩のみにしようかと思っていましたが、NIKEのスウッシュを入れることで、重たい岩は浮力を纏えるのかといったところを表現してみることにしました。


20200914_0031 20200914_0032 本企画用に描いた原画  https://www.instagram.com/p/CC5XWNGj4Hv/?utm_source=ig_web_copy_link


C:今回、それぞれにテーマのある企画なので、さまざまなスタイルになっているのかと思いますが、作品から伝わってくる独自の共通性も感じました。

S:今はないのですが、いろんなジャンルのアートやデザインの画像が掲載されていた『FFFFOUND!』という好きなサイトがあったんです。その影響もあってか、ポスター、絵画、イラストなど好きなものが多いんですよね。その時に描きたい、作りたいと思ったことを、その都度描いたり、作ったりするので、それで身につく技術もあって、スタイルの幅につながっているのかもしれないですが。

共通性みたいなものは、ここ数年間、同じ道具を使って描いているということもあるかもですね。自分で色々試した結果、今の絵が描けているのかなと思っています。ただ、これがないと描けないという訳ではないですし、これまでも一つの道具にこだわって描いてきた訳でもないので、今はガラスペンを使って描いているという感じですかね。筆だとインクを洗わないといけないのですが、これ1本でインクの数さえあれば完結するので、面倒くさいないというか、便利なんですよね。


20200914_0021 現在、使用しているガラスペン


C:確かに、どの作品もガラスペンで緻密に描かれていますよね。いつ頃から、どういうきっかけで使っているのですか?

S:2000年くらいですかね、アルバイトをしていたところで雑貨を扱うことになって、その中にガラスペンもあって、そこで1本もらったものを、ずっと持っていたんです。その後、2012、13年くらいに、福岡で尊敬しているグラフィティライターの方にインクで絵を描くことをすすめてもらったんです。インクを買って、何を使って描こうかと思った時に、家に置いてあったガラスペンのことを思い出して描いてみたんです。

C:以前に子供の頃からマンガのキャラクターなどを模写するのが好きだったと聞いたことがありますが、絵の勉強をしたり、習ったりしていたのですか?

S:小さい時から絵を描くのが好きだったこともあり、高校、大学はデザイン系でした。高校の時は授業で絵を学ぶこともありましたが、大学は美術ではなくデザインの方だったので、すごいしっかりと学んだわけではないです。ただ、絵を描くのは好きだったので、ずっと何かしら描き続けていました。卒業してからも、アルバイトをしながら、少しずつ絵を描いていましたが、その時はボールペンなどで描く細かな絵でしたね。

C:当時から細かな絵を描いていたんですね。

S:描いてはいましたが、細かい絵を描くことだけがいいとは思っていなかったんですよ。ざっくりとした絵に興味を持つ時期もありましたし、そういうもののカウンター的な感じでライブペインティングを始めたんです。


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C:いつ頃、ライブペインティングは始めたのですか?

S:2007年くらいに、DJをしている方に声をかけてもらったのがきっかけで、福岡市内のクラブで活動していました。これを機に、絵で活動していくことになったんです。絵を描くのを好きな人はいましたが、絵で活動ができるんだみたいな。東京など他のエリアにはライブペインターという人がいまして、福岡にゲストで来られた際に、会ってみると絵で活動する幅がもっと広いということを知り、こういう生き方もあるんだなぁと感じました。

C:ライブペインティング時代はどういう作品だったのですか?

S:抽象的なものを描いたり、細かく描いていた絵をざっくりと描いてみたり、いろいろと試していましたね。ただ、人に見られているので、進めなくてはいけなくなるので、たまに思ってもいないものが描けることもありました。家で描く時も休憩が多いのですが、ライブペイントなのに休憩が多いペインターと言われていましたね(笑)。その後、2013年に東京でライブペインティングのコンテストに出た際に賞を頂き、その時に声をかけてくれたANAGRAさんで、これまでに描きためてきた絵を展示させてもらったんです。


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ライブペインティングで描いた作品 (写真提供:佐々木亮平 撮影:前田耕司)


C:その頃から石や槇木の木などモノを描くようになったのですか?

S:その頃ではなく、それから3、4年後に描き始めました。モノに興味を持つようになったのは、二本木(福岡市・平尾)の松尾っていてショージって呼んでるんですけど、ライブペイントの時期くらいから一緒にいまして、彼も絵を描いていましたし、アルバイトが一緒だったり、近所に住んでいたりとか、絵を描く時も一緒だったんですよ。ショージは絵を描くということを一旦やめて、もっと幅広く見るようになったんですよね。その頃、彼が働いていたリサイクルショップで、一緒に働くようになり、その時にモノや家具、空間とかに興味を持ち始め、自分は自分なりの目線で集めたモノを絵にしていくというような、日々楽しみながら描ける絵ということで描き始めたんです。

20200914_0016 20200914_0026 アトリエの至るところに置かれるモノたち




C:モノを選ぶ目線、視点は?

S:白黒で描くのでシルエットで選んでいます。自分が好きな形などを知るためにというか、もともと存在するモノで形あるものなのに、シルエットが抽象的なものもあって、ないものを抽象的に描くのが苦痛だったのが、存在するモノの中に抽象的なものが世の中に沢山あるんだなと思い、それを描いてみようと思ったんです。庭の槇木もそうなんですよね。見慣れているけれど、よく見ると木なのに丸くしてあったりとか。形とかモノに興味を持ち始めてからは、その面白さにハマっていろいろ拾ってくるようにもなりましたね。自然に曲がった針金とか、鉄の塊とか、石とか。偶然、見つけることもあれば、探しに行くこともあります。外へ求めて行くようになり、各地を旅するようにもなりました。


20200914_0036 20200914_0024-4 20200914_0030 特徴的な形やシルエットを描いた作品や庭木を描いたもの


C:その見つけてきたモノに対しての感覚というか、想いのようなものがあれば聞かせてください。自分だけのものにしたいとか、絵にすることで人に見てもらいたかったなど。

S:記録に近い感じですかね。最初は、持ってるものとか、買ったものとかを記録として描いていまして、それを見せようという感覚ではなかったです。自分が手にしたものだけを描こうとルール設定をしていたんですけど、形やシルエットから描きたくても買えないものもあったので写真に撮って描くようになり、ルールやテーマも少しずつ変えていって、描き集まったものが、結果的に作品になっていったという感じですかね。その作品を2018年の個展で一堂に出させてもらいました。絵を描くことが好きだから、描くことで悩みたくないので、描くことを続けられる方法でやってみようと、対象を日常や自然など外に求めていくようになっていました。









佐々木亮平くんとは、2018年のUNIONSODAとFROM WHRE I STANDでの個展のPRや、今夏のHIGHTIDE STORE MIYASHITA PARKでの企画のディレクションなど、仕事としての関わりがあったものの、過去の活動や考え方、視点について、ゆっくりと話しを聞く機会がなかった。今回、話を聞いて、文字を起こすと、「絵を描くこと」「描きたかった」という言葉で溢れていた。そして、最後のひと言から、私が知りたかった一つの根底にあるものが分かったような気がした。もう一つの、その時々の作風については、テーマによって描きたくなるものが変わるので、作品から受ける印象は違うのかもしれないが、それは作風を自らが変えた訳ではなく、自然に描き進めていき、幅を広げていった結果のようにも思えた。何かの企画でもなく、描きたいものはあるかとたずねると「槇木などの木は描きたいですね」とすぐに返ってくる。純粋に絵を描くことが好きで、この道で活動していく彼の今後を楽しみにしている。RÉDACTION  多田 真文



SASAKI RYOHEI|佐々木亮平
1985年福岡県生まれ、福岡県在住。2007年よりライブペインターとして福岡を拠点に活動を始め、九州を旅して出会ったコトやモノなどにインスパイアを受けて作品を制作。2013年に参加したLivepaintDOJOでkaikaikikiより『GEISAI賞』を受賞。2014年に初個展を東京・半蔵門のANAGRAで開催。雑誌『WIRED』での公募企画「CREATIVE HACK AWARD」にて奥田一平との共作がノミネート。2015年に2回目となる個展をANAGRAで行う。 同年、中目黒の「HATOS BAR」と「KINFOLK lounge」にて個展を同時開催。2018年、福岡の「UNIONSODA」と「FROM WHRE I STAND」にて個展を同時開催。ほか「BEAMS T」への作品提供と併せてBEAMS 原宿での作品展示など、アパレルブランドへのアートワーク提供も多数。
https://www.instagram.com/ryoheeeee/

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