DAYS_

Mitsutoshi&Tomoko Takesue

その辻を曲がれ。

はじめまして。
ぼくは妻と一緒に、大橋のorganという店で、椅子や陶器、ガラス製品、それにいろいろな雑貨などを販売しています。新しいものもありますが、おおむね1950年代を中心にした、それも北欧やヨーロッパ、アメリカなどのいわゆるミッドセンチュリーものが多いのですが、日本やアジアなどのクラフト感があるものも好きです。なにをポイントにして選んでいるのかは、漠然とわかっているつもりですが、うまく言えません。この機会に、その辺を自分なりに少し整理できればいいかな、と思っています。
ぼくは、大学在学中からバンドで音楽をやっていました。70年代始めの頃で、ロックが全盛の時代です。洋楽のコピーもどきではなく、なんとか「日本語でオリジナルがやれないものか」という思いでいっぱいでした。具体的には、当時のアメリカのカウンター・カルチャーを背景にした音楽、なかでもザ・バンドというバンドの重くてシリアスなサウンドにゾッコンでした。僕らのバンドは、幸いにも結成してまもなくレコードを出すことになり、ああでもない&こうでもないとアレンジに凝り、リハーサルをくり返し、アーシーな音作りを目指していました。でも、出来上がったレコードを聴いてもまるで納得できません。なんというか、「のようなもの」でしかないのです。
2枚目のアルバムでは180度方向転換をして、イギリスから出てきた新しい音楽、今野雄二さんが名づけた”ロック・マニエリズム”という、アーティーでモダンなポップスを目指すことにしました。こちらのほうは、さまざまな音楽を「様式=スタイル」として勉強するいい機会になったと思います。しかし、アーシーとモダンという相反した2枚のアルバムは一部の好事家には面白がられたものの、数少ないファンを戸惑わせてしまったようです。セールス的にはまったくふるわず、福岡に戻ることにしました。失意のなか、運転免許を取って社会人を目指しましたが世間は甘くない。いくつかアルバイトをするうちに、輸入レコード屋で働かないかという誘いがあり、幸運にもまた音楽の仕事に関わることが出来ました。そんな具合にして、ぼくの社会復帰がスタートしたわけです。その後、ますますアンビバレントで天邪鬼(あまのじゃく)な道を歩くことになります。(武末充敏)
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