DAYS_

Hitoshi Takekiyo

「やり直しができない」ということの大切さ

「undo」って便利ですよね。

やってみてうまくいかなかったなと思ったら、⌘Zでなんでも前の状態に戻れるって、
デジタルのもたらした、すごく重要な発明のひとつだと思うんです。

何回もトライ&エラーを繰り返しながら、緻密に練り上げていく作り方。

これはこれで完成度を上げる方法としてすっごく有効なんですが、
一方で「でもなんだかつまんないな」と思うこともあります。

ボクが学生の時は、まだアナログな8mmフィルムで映像制作をしていて、undoどころか、毎回が本番。
撮り損ねてもフィルムは確実に消費するし、現像代ももちろんかかる。
多重露光なんかやった日には、うまく合成できてるか現像するまで分からないので、それはもうドキドキしながら試写をしたものでした。

昨日、フィギアの原型師と話していて「魅力的な顔の造形って必ず非対称なんですよね」って言うんです。
「整えすぎるとなんだかつまんない」と。
魅力的な造形ってのは、どこかバランスが取れてないことが少なくない。

ハプニングや偶然や、計画通りではないちょっとした「ひっかかり」を残しておくことは、
うまくいけば良い意味で「ちょっとだけバランスの崩れた、乱暴な要素」が加わって、魅力的なものができることがある、
と思ってるフシがありまして、
「バランスの取れていないバランス」という言葉はボクの中で結構重要だったりします。

あるとき、「やり直しが効かない代わりに、本番一発の緊張感が集中力を高めて、多少乱暴さも残しつつも結果オモシロイ表現が出来る」
という、アナログでものづくりをしてた時の良さを、デジタルでもできないもんだろうか?
と思って、試しに、自分の中で「undo禁止。一回目で出来たものが出来上がり」というルールを課してPhotoshopで1コマづつ手描きでアニメーションさせてみたことがあります。

さてさて。「undo禁止による魅力的なバランスの取れてなさ」は、うまく結果に反映されているでしょうか?

SHARE :