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奄美大島へ行ってきました。
March 10, 2015 /
まるで藤戸さんの後を追うようにして、奄美大島へ行ってきました。本当はチュニジアへ行きたかったのですが、このご時世では、イスラム圏への旅はいわゆる「自己責任」とかが邪魔をします。もちろん、海外にかぎらずどこへ行っても、不測の事態は起こりうるわけで、この種の「世論の縛り」は不可解でしかたがありません。無視してもよかったのだけれど、とりあえず前回の台湾旅行でがぜん興味をもった「黒潮の道」の途上、琉球弧の北にあるこの島へ初上陸することにしました。
予約していた「パラダイス・イン」にチェックインをして、さてどこへ行こうかと島の案内パンフレットを広げると「田中一村記念美術館」がすぐ近くにあることを発見。ずいぶん前に、たしかNHKの『日曜美術館』を見て知った”日本のゴッホ”と称される孤高の画家ではありませんか。あの南洋の植物を描いた幻想的な絵は、まさにこの島で描かれていたのでした。忘れていた異能の画家に思わず再会した思いで早速美術館へ向かいました。
偏狭で官僚的な日本の画壇に見切りを付け、この島へ移り住み、ひたすら自分の為だけに描いた異端の画家は、この島で一生を終えたのです。それも、大島紬の職人として細々と生計を立て、お金が貯まると絵を描くという、赤貧の中で。知人への手紙の中で、こう言っています。
「私の絵は最終決定版の絵がヒューマニティであろうが、悪魔的であろうが、絵の正道であるとも邪道であるともなんとも批評されて私は満足なのです。それは見せるために描いたのではなく私の良心を納得させる為にやったのですから…」
なんと我儘(わがまま)なひとでしょう。名瀬の郊外にある終の住処は、トタン屋根の小屋でした。すぐ脇には「泥染め」のための小さな池がありました。そして、森閑としたなか、時折カエルが鳴いていました。