DAYS_

Mitsutoshi&Tomoko Takesue

とっくの昔から”ドリームランド”。

IMG_4204小学生の僕にとって奈良へ行くことは、とりもなおさず「奈良ドリームランド」へ行くことだった。それまで知っていた日本の遊園地とは決定的に違うスケールに圧倒されたのだと思う。まだ見ぬ「自由でファンタスティックなアメリカ」を子供ながらも感じたのだ。そして今回かれこれ50年ぶりの再訪。残念だけど、もちろん「奈良ドリームランド」は存在しない。駅前の商店街を抜けて猿沢の池のほうに曲がると、鹿がいた。街なかで遭遇すると脱走鹿?とドキッとする。一見優しそうな顔をしているけど、なにしろ図体は小さくない、というか大きい。我が家のラブラドールの少なくとも2倍以上はあるだろう。東大寺の方向へ向かって歩いていくと、広い駐車場に数匹発見。彼方を見るとアチラコチラにかなりの鹿たちが散開していた。なんとなく人待ち顔に見えるのは気のせいではない。中国人観光客らしき家族連れがさかんに写真をとっている。そう、ここは鹿のサンクチュアリで、鹿たちは気前のいい観光客の「鹿せんべい」待ち状態なのだ。IMG_4200参道への道を曲がると、いよいよそこは鹿だらけ。そして中国人だらけ。服装では日本人と判別し難くなったとはいえ配色の打ち出しは強い。やはり彼らの大きな声や、フィジカルな動作はどうしても目立ってしまう。「鹿せんべい」を手に、大人も子供もオバサンも鹿と熱烈に「友好」している。もちろん楽しそうなのだが、なかには鹿に追っかけられているひともいる。でも彼らは笑顔で平気だ。ワイルドさでは鹿と互角といったところなのだ。もちろんぼくは”危うきに近寄らず”で先を急いだ。ところが、露天で買った「みたらし団子」をパクツイていたら、音もなく後ろから近づいてきた若い鹿に臀部をドンと小突かれアセった。彼女(おそらく)の力加減はとてもリアルで、なかなか容赦なかった。

IMG_8088鹿の追跡を振り払い、逃げるようにして本堂に入り大仏さんと対面。ウーン、想像してた以上に唇がエロティックだ。おまけに鼻筋が通りすぎだし、するどい半眼はまるでゴルゴ13。どう見ても日本人ではない「架空の西洋顔」ではないか。仏教というピカピカの外来宗教を、最先端のカルチャーに見立てて、歩き始めたばかりの日本国家統一のモニュメントにしたのだろう。平城京はシルクロードの東端である。奈良時代にギリシャ、インド、中国を経て到来した異文化はこの地でファンタスティックに独自の着地を果たした。それにしても再建とはいえ、大仏さんを作ったスキルの高さに、今や世界を席巻したMANGAカルチャーの先取感を感じてしまう。奈良は、とっくの昔から”ドリームランド”だったのかもしれない。

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