DAYS_

Mitsutoshi&Tomoko Takesue

真っ暗な夜と、ザルの舟

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先日、ベトナムの古い街ホイアンへ行ってきました。昔むか~しから、海を通じて中国や日本との貿易が盛んだったらしいこの街には、以前栄えた古い街並みが残っていて、黄色やミント色をベースにした色鮮やかな風景がオリエンタルな魅力たっぷり。写真によっては、鮮やかに塗られた壁面と強い光がふと、地中海や南米あたりの乾いた土地の風景にも、見えなくもない!? とにかく歩いて・見て・歩いて、そんな意外さも楽しみました。

3月19日、そのホイアンで4泊目の夜のこと。夕食の最中に大きなサイレンが鳴り響いたと同時にカフェの電気が消えて真っ暗になったのです。(↓通常の夜の風景)

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「…!?」レモングラスのアイスをほおばっていた私は突然のことにビビりました。様子を伺うとあたりも真っ暗。そのエリアはさっき書いたとおりの古い町並みが世界文化遺産に登録されているような観光地なので、夜には名物のランタンが赤・青・緑と色鮮やかに照らされ、道に並ぶ屋台には人々がいっぱいの、どちらからというと賑やかな場所。ホテルからこの場所まで毎晩、歩いて5分ほどの道を行き来していた私達は、ようやく周辺の事情が飲み込めてきたつもりだったから、この状況にハテナがいっぱいです。(↓その夜)
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私達と同じくまわりのテーブル客も何事か?と顔を見合わせました。が、スタッフはなんでもないように仕事を続けているので??そして、なんとなく周りの会話から、これは計画的な停電だ、ということがわかったので少し安心したのです。
アイスを食べ終わり、スタッフに「何時までこの状況なの?どのくらいの頻度でコレやってるの?」と聞くと、「1時間ほど続く、21時までだよ。今年は今日だけだよ、だから今、高い所から見下ろしたら、いつもは明るい街が真っ暗になってるんだ。」と、ちょっと自慢気に教えてくれました。「帰る時は足元とカバンに気をつけてね。」と言われ、細い真っ暗な路地を歩く。こんな時はiPhoneの懐中電灯が役立つな、と夫とふたり自慢気に表通りに出ると、ホント、いつもは路面店とランタンで明るい旧市街の道路が真っ暗。ただ、同じ道を歩いて帰る知らない人たちも家族連れで小さい子がいたりして、てれりてれりと歩いてる。月明かりもあるし、ほんの所々には電気が点いているから余裕、で、なんだか暗いほうが心地よくなってきました。案の定、一緒に歩いていた夫はすぐにiPhoneの電気も切ってました、そのほうがいいよね。街の中心を流れるトゥボン川でいつもは灯篭流しされている灯篭が、その夜は「60+」と意味ありげに置かれていて、私はムラムラとこのイベント(?のようなもの)が、何なのか知りたくなりました。
さらに大きなメイン道路に出るとバイクと車の光がやけに眩しく感じます。ベトナムには信号機が激少で、車もバイクも自転車も人も、みなさん上手に道路を渡ります。暗くったって同じこと、ようやく渡るコツを覚えた私達も、じわりじわりと信号なしのメイン道路を渡り終え、さらにホテルのほうへ進み続けると、地元のおじさん達が自宅の軒先で集まって薄暗い中でギター片手に歌っていたりもするのです。それぞれに楽しそう。hoian.001
ホテルに帰って早速調べてみたら、世界中で開催される消灯リレー「アースアワー」という環境イベントで、ホイアン市民が “都市レベル” でそれに参加しているものでした。

※ポイントは、結構かっちりと市民を巻き込み、ルールを守らせている。ホイアンの主催者ページ文言には “「2016年度のアース・アワー」を呼応するための停電の令を公表します。”と、はっきり明記されていました。で、実際には85%ほどの消灯かも。それでも、いいんです。
日頃なかなかこういう環境イベントに参加しない私は、旅先で遭遇したことでかなりの刺激を受けて、「私が住む福岡市も、せっかく何かをやるんだったらこういうのに参加すればいいのに!」と、本気で今思ってます。都会でだからこそ感じられる”1時間の暗黒”=非日常ってのは、旅に匹敵するほどの刺激があるんじゃないかな。なにやら色々考える時間でした。

さてさて、そんなホイアンでいろんなものや景色を見てまわったのですが、一番印象に残ったのは…丸~いザルの舟に乗ったことでしょうか? 地味で、すいません。
その丸い舟たち、はじめは写真でしか見ていなかったのでサイズ感がわからずに、てっきり水辺に置かれた竹ザルだと思っていました。プロポーションが非常に良くて経年変化でザルが黒光りしていて、…あぁ素敵、あれはいったいどこで手に入るのだろう?と妄想してみたりもしました。
hoian3.001 ところがローカルツアーに参加して見たそれは、大人が3人乗れるほどの大きさの、舟!?買えないじゃん!ざーんねん。見たらご丁寧に腰掛けまであるのです。が、「なぜ、丸?」の疑問に地元ツアーガイドがすかさず説明してくれました。この辺りの水路は狭いので、丸だと方向転換しやすく、小回りが利くからだ。とのこと、素晴らしい!最終的には地元漁師と一緒にこの舟に乗って、マングローブの浅瀬でカニ釣りをしたり(どんだけ端っこに立ってもまん丸だと安定感がありひっくり返りにくいみたい)、ぐるぐると回転する!(丸いから出来ますもんね、遊園地のコーヒーカップに乗った気分でした)サービスまでいただきました。買えなかったけど、すごい民の道具だと、感激&大満足したのでありました。
昔ながらのスタイルと、現代と、未来思考も混合しているような気がしたホイアン。また行くからね!カモン!(ベトナム語で「ありがと」です)

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